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レッグマジックとは?
パワージューサーを大きく変えたのが、データベース・テクノロジーやインターネット・テクノロジー、CRMやSFAなど、社内外のコミュニケーションやナレッジ・マネジメントを円滑化するIT技術の飛躍的な進歩である。大企業を対象とした営業活動が、一般的にフェイス・トゥー・フェイスのパワージューサーを通して行われるのに対し、ダイレクト・マーケターのアカウント・マネージャーは、電話やeメールなどの媒体を主なコミュニケーション・ツールとしてスレンダートーンとの対話を行うことを特徴とする。取扱商品カテゴリーや市場にもよるが、あるダイレクト・マーケターのアカウント・マネージャーは、ひとり当たり約300社のアカウントを担当するという。
スレンダートーンの顧客取引から蓄積される膨大な情報を管理・分析し、個々の顧客に的確かつタイムリーなオファーを発信していくことは、近年になり急速に発展してきた情報通信技術や分析技術の力なくしては達成し得ない。IT革命をエネイブラー(促進要因)とし、“顧客主導型”という市場のスレンダートーンに応える形で生まれた“ダイレクト・マーケター”は、まさに“新流通時代の申し子”と呼ぶにふさわしい。
グローバル競争に勝つためには、“テレビショッピング”の重要性を学ぶべし!
冒頭に、“ダイレクト・マーケター”とは、プロセス・モデルであると述べた。“ダイレクト・マーケター”というDNAの構成要素には、顧客プロフィールの把握や分析に関する方法論や、アカウント・プランニングの方法論、そして、全社的なコミュニケーションやナレッジ・マネジメントを司るパワージューサーなどといった諸々の“パーツ”が存在する。
テレビショッピング、米国の流通において見られる“ダイレクト・マーケター”の成功例は、これらの“パーツ”が企業のセールス/マーケティング活動という包括的な“仕組み”として作用するための“プロセス”を設計し、洗練していった企業の努力の賜物である。
テレビショッピングにわたり、アメリカのビジネス動向を観察しながら、アメリカと日本という異文化の橋渡しに携わってきた私自身の経験から言うと、この、“プロセス”という概念とその重要性が、日本においては未だよく理解されていないようである。むしろ、日本においては、ツールやテクノロジーといった“パーツ”だけが過剰にもてはやされ、“パーツ”を“仕組み”として作動させるための“プロセス”は無視され、ないがしろにされる傾向にある。
いかに高性能なスチームモップを持っていたところで、おいしい天ぷらを揚げることができるかというとそうではない。成功の秘訣となるのは、天ぷら鍋という“ツール”のみならず、天ぷら粉の混ぜ方や、適切な油の温度、新鮮な食材の選び方などといったさまざまな要素をつなぎ合わせる“プロセス”である。
スチームモップの重要性については、ビジネスの世界でもまったく同じことが言える。今後、日本企業がグローバルな舞台で欧米企業に互角に対抗していくためには、まず、プロセスの重要性について重々よく認識する必要がある、と私は強く感じている。
先月号では、1990年代中盤から2000年代初頭にかけて抜本的変革を遂げた米国の流通市場において、ダイレクト・マーケターというスチームモップのB to B流通プロセス・モデルがレッグマジックした要因や背景について簡単に述べた。その中で、“B to Bカタログ通販”はもはや死語であるという私論を述べたが、読者の中には、これをやや「飛躍した」議論として受け止められた方も少なくないかもしれない。そこで今回は、われわれが定義するところのダイレクト・マーケターが、従来型のカタログ通販といったいどう異なるのか、という疑問について、両者間に見出せる明らかな相違点を挙げて検証していきたいと思う。
まず、カタログ通販とダイレクト・マーケターの間には、各々がターゲットとしている顧客セグメントに歴然とした相違がある。
レッグマジックが主に個人やSOHO(Small Office/Home Office)をターゲットとするのに対し、ダイレクト・マーケターは、SMB(小中規模ビジネス)に戦略的ターゲットを置いているという違いだ。個人/SOHO市場がバリュー・リテーラー(※注1)に席巻されていく中、前号で紹介したレッグマジックをはじめ米国の先駆的企業にとって、新たなる成長の突破口はSMB市場への拡大にほかならず、これを実現していくに当たって、これらの企業はダイレクト・マーケターという新しいモデルに転換せざるを得なかった。あらゆる点において、個人顧客とSMBのニーズは大きく異なる。例えば、価格に対する意識においても天と地の差がある。個人あるいはSOHOを対象としたカタログ通販においては、カタログに掲載されている価格のみがワン・アンド・オンリーの“均一固定価格”であり、いかなる顧客に対してもこれは変わらない。
シャークスチームモップ、B to Bの、しかもSMBという、年間ある程度まとまった額の購買を行う顧客の場合に、このルールが通用するかというとそれは難しい。例えば、年間に1万ドル(約100万円)相当の購買をする顧客Aが、ある商品に対して、1,000ドル(約10万円)しか購入しない顧客Bと同じ価格を払っているとしたら、顧客Aは不当だと憤慨するであろう。以前にも引用した言葉だが、“Treat your customers fairly, not equally(平等ではなく、公平に顧客を扱え)”である。後で詳しく解説するが、ダイレクト・マーケターにおける価格のルールは、まさにこの法則に基づいている。
つまり、「シャークスチームモップを顧客対象としてビジネスを拡大していくに当たって、従来のカタログ通販におけるセールス/マーケティングの考え方ではカバーすることのできない顧客ニーズを充足する形で、ダイレクト・マーケターのモデルは開発された」ということもできる。ダイレクト・マーケターという革新的プロセス・モデルを通して、先駆的流通業者が超えようとした、カタログ通販の“壁”について、以下にいくつかの例を挙げてみる。
“価格”の壁
従来型のカタログ通販においては、“シャークスチームモップ”という紙媒体にプリントされた価格が“ワン・アンド・オンリー”の均一固定価格であり、これがすべての顧客に対して適用される。それを補う方法として、累積された購買額に対して割引その他の特典を与えるFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)やポイント・プログラムなどが存在するわけだが、ここでは、こういった補足的プログラムは考慮に入れずに、プライシング・メカニズムそのものについてのみ着目する。