本人にしか分からない画像を選ぶことで、正式なユーザーであることを証明するというユニークな認証技術「ニーモニックガード」を開発。 本人にしか分からない画像選択で認証 本人になりすまして銀行口座からお金を引き出す犯罪が後を絶たない。金融機関は対策として指紋などを使った生体認証システムを導入している。だが、万能にみえる生体認証にも運用上の弱点がある。本人拒否や他人受容といった「誤認識」が起きるため、システム単独の運用が難しい点だ。「安全で確実な認証技術はないものか」−。こんな時代の要請に応える技術を開発したのがニーモニックセキュリティだ。 同社が生みだした認証技術「ニーモニックガード」は、初恋の人や昔飼っていたペットの写真など本人にしか分からない画像を選ぶことで、正式なユーザーであることを証明するというユニークな方法だ。 認証の手順は簡単。複数の画像のなかに本人に関係のある画像を紛れ込ませ、そこから登録通りの正しい順番で画像を選ばせる。例えば、20年前に撮影した子供の写真4枚を照合データとし、64枚の画像から4枚を選ぶといった要領だ。 「数字の暗証番号は覚えにくいが、視覚的な画像は記憶に残りやすい」(國米仁社長)点に着目した。本人は忘れないため紙などに書き留める必要がなく、認証方法が第三者に漏れる心配がない。暗号を解く電子的な「鍵」は認証で一時生成され、手続き完了後は自動消去するため、「鍵」が盗まれる恐れもない。既存のパスワードの弱点を見事に克服した。 企業向けにASPサービス開始 全体の画像数や認証通過に要する画像数はセキュリティーの強度に応じて自由に設定できる。認証時に、本人の押し間違いなどの「ニアミス」は許容するが、本人がやらないような見当違いの選択をした場合は、すぐに拒絶する機能も備えている。 同社はすでにパソコンで取り扱うデータ(ファイル)などに暗号をかけるソフトウエアを販売している。特定ファイルを暗号化しておいて、認証手続きを踏まないとそのファイルを開けない仕組みだ。今後は高齢者にも手軽に利用できるソフトとして売り出す。 2005年11月に欧米市場への進出も果たした。次世代大容量USBメモリー「U3」の推奨製品に選ばれ、サイト経由でダウンロード販売している。2006年2月には企業向けに、インターネット回線を通してソフトの実行環境を提供するASPサービスを始めた。電子商取引サイトを運用する企業などに提供していく。 同社が描く事業構想は大きい。「ネットワーク社会を考えれば、本人認証はいつ、どこでも必要になる。ニーモニックガードはセキュリティー強度の点からも生体認証に代わりうる。老若男女を問わず、低コストで使える技術として本人認証技術の大きな受け皿にしたい」(同)として世の中に広める考えだ。「今後のIT社会を下支えする」理念を掲げ、事業拡大にまい進する。 One Point <普及へ他社との提携も> 着眼点が大変ユニークだ。独特であるがゆえに、製品価値で他社の追随を許さない。今後注目すべき点は、どこまで幅広く普及させるかだ。そのため、まず消費者などの目に触れる機会を増やすことが先決だろう。他社との共同ソリューションなどアライアンスが普及の近道だ。また、分かりやすさを訴求し、若い購買層を取り込むことも普及策として有効だ。 「真のアプリ連携」始まる 「オーディオ業界に遅れること35年。ソフトウェア業界も“真のアプリケーション連携”を実現した」──。 国内ソフト会社が製品連携や海外展開を目指して集結した任意団体「メイドイン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)」が構想から1年3か月。実装段階にこぎ着けた異なるソフト会社の複数ソフト間のデータ連携規格「MIJS標準規格」の第一弾を発表した席上、MIJS技術部会長の梅田弘之氏(システムインテグレータ社長)は冒頭のように述べ、日本のソフト業界が「新たな局面」に突入したと宣言した。 昔のステレオは、スピーカーやアンプ、レコーダーなどを「一体型」にした単独1社による製品だった。現在は、これらを別々のメーカー製品で自由に組み合わせられる「コンポーネント型」。インターフェースの統一を業界あげて実現したためだ。一方でソフト業界は、競争するなかで、重要なことを長年怠ってきたのだ、と。 ソフト業界は、「スイート製品」と称し、1社のソフト会社製品で会計・財務、販売管理などを賄うことに力を注いできた。いわゆる「1社囲い込み」だ。しかし、企業はそれに反し、システムに応じてベストな製品を選択する。結果、異なるソフト会社製品が散在する事態に陥った。「もはや、スイートの発想は(企業ニーズに合致せず)限界だ。ベスト・オブ・ブリード(適材適所・疎結合)の流れが顕著だ」と梅田氏はみる。日本のソフト業界発展のためには、競合関係にあるソフト会社が協力し、オーディオ業界と同じく「標準規格」を作る必要があったというのだ。 「MIJS標準規格」の第一弾は、ソフト業界の発展を阻害してきた課題を解決する“切り札”といえる。これまでにも、「業界VAN」や「外部EDI」など、企業間のデータ連携はあった。しかし、これからは、特定の企業間だけでなく、「企業内アプリケーション」の連携が必要というのがMIJSの主張だ。 具体的に同規格は、いくつかの連携を実現するという。1つは、会計や販売管理など基幹システムだけでなく、ワークフローなどフロントシステムなどを含めた製品間のデータ連携を行う「トランザクション連携」。次に、「MIJS発足当時から最重要課題と位置づけてきた」(梅田氏)とする「マスタ連携」。各製品に各ソフト会社がマスタを作成すれば、社員、顧客などのマスタを簡単に連携できる。 「マスタ連携」に関しては、MIJSが11月に開設した「バーチャル検証センター」と会場をつなぎ、発表の場で実際にマスタが自動的に連携するシーンを実演してみせた。インフォベックのERP(統合基幹業務システム)「GRANDIT」に登録した社員マスタを、アダプタと同規格を介してソフトブレーンのSFA(営業支援システム)「eセールスマネージャー」へ瞬時に転送し、会場をどよめかせた。 MIJSは、標準規格のブラッシュアップを急ぎ、幅広い国産製品を自由に選択できる「SaaS(Software as a Service)ポータル」を構築する計画。近く理事会を開き、開設時期を決める。製品連携が容易になり、購入も簡単にできる。残る課題はユーザー企業にこれらメリットを、技術的にうまく説明できる人材を養成することにありそうだ。 日米欧で開発競争が激化 自動車を制御する統合OSを巡る争いが激しさを増してきた。名古屋大学の高田広章教授を中心とするTOPPERS(トパーズ)や欧州勢の標準化規格のOSEK(オーゼック)、米マイクロソフトなどが参入。今後拡大が期待される自動車用の組み込みソフトウェアの主導権を握るべく、開発競争が熱を帯びている。組み込みソフト開発ベンダーは、どのOSが主流になるかを見極める必要がありそうだ。 TOPPERSは、組み込み用OSの向こう5年間の開発ロードマップを11月に発表。OSの安定稼働に欠かせないメモリや割り込み時間の保護機能の拡充や、安全性が強く求められる自動車への応用に耐えられる機能安全性の確保、車載ネットワークミドルウェアの開発などの新基軸を示した。OSの中核となるカーネルは、来年5月をめどに一般向けに広く公開する予定だ。 開発プロジェクトには中部地区を中心とした自動車向け組み込みソフトに強いITベンダーや部品メーカーが参加し、オープンソースソフト(OSS)方式で開発を進める。OSによるメモリ管理や時間の保護機能については、10月末に実車を使った実証実験を、大手自動車部品メーカーのアイシン精機のテストコースを使って実施。将来的にはトヨタ自動車などによる本格採用を目指す。 これに対抗するのは組み込み向けのWindowsの開発に力を入れるマイクロソフト。これまでに1億ドルもの開発投資を行っているといい、今年度(2008年6月期)は前年度比30%増の投資を予定する。競争が激化している自動車向けの組み込み用OSについても、「競争に勝てる」(米マイクロソフトで組み込み用OSを担当するケビン・ダラス・ジェネラルマネージャー)と自信を示す。 自信の根拠になっているのが、Windowsがサーバーやパソコン、モバイル機器などさまざまな分野で優位なシェアを持っている点だ。アプリケーションの種類も豊富にあり、今後、自動車用の車載システムがITS(高度道路交通システム)やインターネットなどを通じて外部のネットワークと連携を深めていく上で、有利に働くとみている。一方、TOPPERSは「自動車だけのOSではない」(高田教授)とするものの、車載用電子機器を制御するECU(電子制御ユニット)の分野で先行しているのは事実。同じ自動車向けでも両者が進出する領域に違いが出てくることも予想される。 また、欧州勢を中心に規格化が進んでいるOSEKの存在感も増しており、自動車業界ではどれをメインにするのかを決めかねている状態だ。特定の規格に縛られるのではなく、「オープンさを優先したい」(アイシン精機の鈴村延保・電子系技術部副部長)と、ITベンダーに主導権を握られたくないとの思いもある。トヨタ自動車など大手自動車メーカーも独自に研究開発を進めているものとみられる。「メーカーとは交渉中で、詳しくは言えない」(高田教授)と、水面下での駆け引きが活発化していることをうかがわせる。 携帯電話や情報家電向けの組み込みソフトの需要が頭打ちになるなか、自動車向けは今後大幅な需要拡大が期待できるだけに、OSの動向次第で組み込みソフト業界の勢力図が変わる可能性もある。